2017年1月8日日曜日

New Year Message from the Editor in Chief of Progress in Earth and Planetary Science

[Japanese text follows English. 日本語版は英語版の後に表示します。]

A happy new year to all

In 2016 PEPS received 60 manuscripts and published 37 papers. Since PEPS was only launched two and a half years ago we have not yet had time to finish our registrations with either of the main international research paper databases Scopus or Web of Science. In view of this I think we can regard the number of published papers as a modest sign of success. We have now completed our applications to both Scopus and Web of Science and these are currently being reviewed. I hope that I will be able to report sometime later this year that both applications have been accepted.

At the moment it takes on average 190 days from receiving a manuscript until it is published. The editorial team is focusing on “rapid review and publication” in order to reduce this time. The editorial office monitors the speed with which manuscripts proceed through the system and sends email notification to the relevant editors when there is any delayHowever the time to publication is largely dependent on the speed at which referees are able to review papers. I would therefore like to take this opportunity firstly to thank everyone who has or will review papers for PEPS for their hard work, and secondly to humbly ask that referees aim to complete their reviews as quickly as is reasonably possible.

We receive many manuscripts written by authors who are not native English speakers: for these manuscripts we have adopted a system of provisional acceptance. Under this system, manuscripts are sent out to referees and those by non native authors that are favorably reviewed are provisionally accepted and then sent to an English language proofreading company at the JpGU’s expense in order to correct any minor mistakes in expression or grammar. Although this all happens before the manuscript is formally accepted, in practice provisional and formal acceptance are nearly equivalent and we have so far published all of our provisionally accepted articles. The reaction to this process has generally been positive but we have had some complaints that manuscripts have been over edited, that the burden on authors is increased and that the system leads to delays in publication. There is some truth in these complaints. However it is our main goal that PEPS be regarded as a journal of the first rank: we are working hard to achieve this, and, I feel, have had much success in doing so. In order to maintain our status we have to consistently publish high quality papers where excellent scientific content is clearly presented and precisely explained. Unfortunately this requires, amongst other things, a certain level of English language competence. I apologize for the additional burden that this places on our non native authors, and hope that they will understand our position.

I have been aware for a while that Japanese institutions have been suffering from the rapid increase in online journal subscription fees. In the past few months there have been several international developments affecting this issue. At the end of last year negotiations between Elsevier and a group of German state funded universities and research institutions broke down with the result that from January 2017 researchers at these organizations will lose online access to many Elsevier journals. Similar problems have occurred in Taiwan and Peru (Nature News on 23 December 2016). Such problems serve to emphasize the important role that open access journals have to play in the field of academic publishing, and these developments further convince me that PEPS, as a high quality international open access journal covering all of the areas of Earth and planetary science, has an important role to play.

Recent years have seen the increasing popularity of letter journals, and indeed these offer a number of advantages: the compact presentation enables readers to quickly acquire an overview of material they are interested in whilst authors benefit from the relatively short time between submitting a paper and its publication. Despite these benefits, the importance of detailed exposition of new scientific ideas and results of course remains undiminished and this is why PEPS has chosen to focus on this area. We want our authors to explain their ideas in detail and we allow them up to 50,000 words per paper in order to do so (and, as I mentioned above, we are working to further reduce the time to publication of our papers).

The purpose of academic study is not only the creation of new knowledge. For it to be of any use such knowledge must be transmitted to the wider community, and we at PEPS are doing all we can to help with this. I would like to thank everyone for the assistance they have already given us and respectfully ask you all to continue to help, firstly by considering publishing new work in PEPS, and secondly by refereeing any articles we send you as quickly as is reasonably possible

Finally let me wish you all a happy, productive and prosperous 2017

Yasufumi Iryu
PEPS Editor in Chief



PEPS総編集長の井龍 康文です.2017年の年頭にあたり,皆様に御挨拶申し上げます.

2016年,PEPS37編の論文を出版しました.また,投稿を受け付けた原稿の数は60編でした.これは,PEPS創刊から28ヶ月ほどであること,Web of ScienceWOS)やSCOPUSという国際的な論文データベースに採録されていない現時点では,健闘している数値であると認識しています.なお,WOSおよびSCOPUSへの採録ですが,昨年,採録申請を行い,現在,審査を受けております.2017年に皆様に朗報をお届けできると期待しています.

現在,PEPSでは原稿受付から出版までに,平均で190日ほどを要しております.編集部では「Rapid review and publication」を心がけており,査読の遅れている原稿に対しては,編集事務局から編集委員の方々へ対応を求めるメールを送り,査読が迅速に進むようにしております.しかし,査読期間の長短は,査読者による査読の遅速にかかっています.査読者の御尽力に感謝するとともに,「Rapid review」達成のためにより迅速な査読を心がけていただくようお願いします.

一方,英語を母国語としない方が筆頭著者となっている論文原稿に関しては,査読完了と正式受理の間に,暫定受理という手順を採らせていただいております.これは,PEPSが経費を負担して,暫定受理された原稿を英文校閲会社による英語表記のポリッシュアップに出すためです.原稿の正式受理前に行う,この「もう一手間」は概ね好評ですが,英文校閲会社のオーバーエディティング,著者の負担増,出版の遅れ等に関する批判もいただいております.しかし,創刊間もないPEPSが数多くある学術雑誌の中で高い評価を得て,一定の地位を占めるためには,優れた科学的成果が,きちんとした体裁(英語表記を含む)で書かれた「高品質」の論文を出版していくことが唯一の道ですので,「もう一手間」に関して,御理解いただければ幸甚です.

年末に,ドイツの主要な大学・研究機関とElsevier社との交渉が決裂し,20171月から,それらの研究機関ではElsevier社の電子ジャーナルへのアクセスができなくなるとのニュースが飛び込んできました(カレントアウェアネス・ポータル).日本国内の多くの研究機関では,電子ジャーナルの購読費用の高騰に苦しんでいますが,これは国際的な問題となっています(例:「台湾やペルーでも、2017年からElsevier社の電子ジャーナルの閲覧が不可能に」).このような状況の下,オープンアクセス・ジャーナルの役割と責任は非常に重要なりつつあります.PEPSは,地球惑星科学の全分野をカバーするオープンアクセス・ジャーナルとして,国内外の地球惑星科学のコミュニティーに「高品質」の論文の出版の場を提供していく所存です.

近年,レター誌の人気が高まっています.これは,投稿から出版までの期間が短いという投稿する側のメリットと,知りたい内容がコンパクトに書かれているという読む側のメリットの相乗効果によるものだと思います.一方,PEPSはフルペーパーが対象で,1論文あたりの最大語数は5万語まで許容されています(投稿から出版までの期間も,それほど長くはありません).したがって,伝えたい内容をすべて伝えることができるというメリットがあります.

学問の目的は,知の創造と継承と言われますが,PEPSが,その舞台となり発展していくように尽力したいと考えています.PEPSの発展のためには,皆様の積極的な投稿と,迅速な査読に対する協力が不可欠です.ここに,皆様のこれまでの御尽力に心から感謝するとともに,今後のなお一層の御協力を切にお願い申し上げます.

末筆ではありますが,皆様の御健勝と御発展を祈念しております.

PEPS総編集長

井龍 康文

2016年11月24日木曜日

インパクトファクターを巡るPEPSの今日この頃

PEPS地球生命科学セクション編集長の川幡 穂高です。

インパクトファクター(Impact Factor, IF)が皆様の研究成果の評価に使われるようになり,戸惑いを持つ方も多くおられるかと思います.この引用索引という指標を科学界に広めたのはEugene Garfield博士で,1955年にこれに関する最初の論文が発表されました.この指標は,もともと図書館で雑誌を購入する際の判断基準の一つとして考案されました.皆様もご存知のように,IFは,ある雑誌に掲載された論文がどの位引用されたかというデータを通じて,雑誌が1論文あたり平均何回引用されているかを算出するものなので,「雑誌を評価する指標」です.

しかしながら,最近適切でない使い方がしばしば見受けられるようになってきました.大学設置基準が改正され,大学の自己評価が義務づけられました.高いIFを持つ雑誌に掲載された論文を集めて,大学の主な成果とする風潮や,雑誌のIFを足した合計などを各々の教員の評価に使用したりするのも,これに含まれます.特に,後者の使い方については,もともとIFの考案者であるEugene Garfield博士が「このような形で利用すべきでない」と注意喚起されているそうです.

PEPSでは,地球惑星科学の海外の一流誌に匹敵する位のIFを獲得すべく努力をしています.その理由は,IFは「ジャーナルの評価」としては,それなりの意味をもっているからです.PEPSはオープン・アクセスのジャーナルとして,投稿料をいただきながら,世の中にある商業誌との競争をしていかなければならないという環境の下で出版されています.そのため,一流誌に匹敵する位のIFは必須となります.ただし,むやみに高いIFを狙わねばならないという商業的意図はないので,AGU(アメリカ地球物理連合)のような良心的な学術誌を目指していきたいと考えています.

さて,AGUにおいても,以前はジャーナルを自社出版してきましたが,現在ではWiley社より出版されています.出版情報の流通の効率化が目的であったと聞いており,学会自身が学術雑誌を直接経営していくことが昔より難しくなり,出版事業がプロ化してきたことを反映しているのかもしれません.現在PEPSは,Emerging Sources Citation Indexという,地域的に重要なジャーナルや新しい注目分野のジャーナル3600誌をカバーする,IFが付与されないデータベースに採録され,さらに,IFの付くScience Citation Index Expanded(28,000誌)への登録申請書を提出して,審査を待っている段階です.現在,PEPSの投稿者の多くは,日本地球惑星科学連合大会などに参加された方やその周辺の方々ですが,Science Citation Index Expandedに登録され,IFが付与されれば,世界中の研究者がPEPSを知ることとなり,海外からの投稿,海外の方によるPEPS論文の引用も増加すると期待されます.そのような「広告」という観点からもIFをもつことは重要と考えられます.なお,IFを算出する部門は,今年Thomson Reuter社よりClarivate Analytics社に売却されたので,IFは今後Clarivate Analytics社より発表されます.


PEPS地球生命科学セクション編集長 / 東京大学 大気海洋研究所 川幡 穂高



2016年8月22日月曜日

進化した世界で,新たに生じた面倒さ

~論文の図に関して~

PEPS総編集長の井龍です.

数年前,現在の所属先に移動するに際して,部屋のマップケースの中身を整理していたところ,デカドライとスクリーントーンが大量に出てきました.博士課程在学時に買い求めたものを約四半世紀も後生大事にしまっていました.

今の院生や学生には異次元の話と思われることは必至ですが,二十数年前ごろまでは,図はハンドメイドで,レタリングにはデカドライ(文字シール)を,模様にはスクリーントーン(模様が印刷されたシールのようなもの)を使っていました.デカドライもスクリーントーンも一通り揃えると,それなりの値段となり,貧乏院生には大きな負担でした.校費や科研費で購入している教員を羨ましいというより,恨めしく思っていました.しかし,パソコンで描画用ソフトウェアーが使えるようになると,このような状況は終わりました.それは,私の周辺では,1990年頃だったと記憶しています.

さて,PEPSのウリの一つにRapid publicationがあります.そのため,事務局は,個々の原稿の査読から出版までの状況を,常時,ウォッチしており,1週間に1度(月曜日の夕方に),総編集長および6名のサイエンス・セクション編集長にレポートが配信されます.しかし,このような査読の迅速化に対する取り組みも,SpringerOpenの制作部門で原稿が滞ることがあり,善処を求めて来たところです.かなり改善されては来たのですが,問題がなくなった訳ではありません.

制作部門での遅れが生じる原因をサーチしてきたのですが,その一つとして,原稿の図に問題がある場合,制作が遅れ気味であることが分かってきました.そこで,Rapid publicationのために,以下をお願いしたいと思います.以下は,他のジャーナルに投稿される場合にも,当てはまると思います.

1. 図の解像度は300dpi
現在,ジャーナルの冊子体の図や写真の解像度は,300dpiに設定されています.ですから,300dpiより解像度が低いと不鮮明になってしまいます.一方,300dpi以上の解像度にしても意味はありません.300dpiで作成しておけば問題ありません.

2. EPS形式で保存したファイルをアップロード
イラストレーター等の広く使われている描画用ソフトウェアーで作図した場合,それらはベクトル画像となっています.制作部門に送られた図が,そのまま使えれば問題ないのですが,制作部門で図を加工する必要が生じた場合や著者校正で修正を求める場合,予めベクトル画像が送付されていれば,制作部門での作業が迅速に進みます.よって,投稿時には,図はEPS(Encapsulated PostScript)形式で保存したファイルをアップロードすることを勧めます.

3. フォントはアウトライン化
文字情報であるフォント・ファイルの搭載状況は,OSや同じOSであっても,バージョン等により異なります.そのため,自分が作成した図のファイルを別環境下で開いた場合,同じフォントがなければ,文字化けや別書体による置換が起きてしまいます.文字を図形化してしまい,どんな環境でもフォントが作成者の意図の通りに見えるようにするというのが,アウトライン化です.文字化けは,ギリシャ文字で頻発しますので,特に注意が必要です.

その他,数値とSIユニットの間にはスペースを入れる,緯度・経度を表記する際には,北緯と東経を示すNとEを記入する(少なくとも1箇所)等にもご注意ください.

少し詳しく書きましたが,それぞれの注意事項について,何故,そのような注意が必要なのかを理解していただければと思います.それにしても,デカドライとスクリーントーンを使って図を描いていた頃,こんな便利な時代がくるとは想像すらしていませんでした.この先,どのような進化が訪れるのかが楽しみです.


ちなみに,デカドライはすでに生産停止となり,未使用品には平均して3000円以上の値段がついているそうです.しまった!
PEPS総編集長 / 東北大学大学院 理学研究科 地学専攻 井龍康文


2016年5月18日水曜日

日本の「研究力」はどうなっているのか

PEPS宇宙惑星科学セクション編集委員の山本衛です。

日本の「研究力」の現状はどうなのか?これについて国立大学協会政策研究所から所長自主研究「運営費交付金削減による国立大学への影響・評価に関する研究~国際学術論文データベースによる論文数分析を中心として~」(2015年5月)という報告(以下では「報告書」と呼びます)が公表されていますので、ご紹介します。調査をまとめたのは鈴鹿医療科学大学学長の豊田長康先生です。トムソン・ロイターInCitesというWeb of Scienceをさらにまとめたデータベースをもとに、各国の論文数の比較分析を行っています。また各国の公的研究資金や日本の国立大学への運営費交付金や科研費の情報を加味し、研究力向上への提言をまとめています。豊田先生はご自分のブログを持ち、そこで2010年ごろから根強く議論を続け、この報告書に結実したようです。

報告書に示されている日本の科学技術の現状は衝撃的です。ぜひ多くの方が目を通されることをお勧めします。報告書からの引用ですが、「(各国との比較において)2002年頃から、唯一日本だけ論文数が停滞~減少し、2012年時点で5位となっている。人口あたり論文数は停滞し、先進国で最も少ない。2013年人口あたり論文数は世界35位、台湾は日本の1.9倍、韓国は日本の1.7倍。2013年生産年齢人口あたり論文数では日本は31位。日本の研究力は東欧諸国グループに属する。」などという事実の列挙が続きます。

背景にある原因として、公的研究資金について比較を行い、「高等教育機関への人口あたり公的研究資金と論文数は正の相関をする。日本は先進国で最も低い。」と指摘し、それが大学の研究従事者数と博士課程大学院生数を強く制限している姿を示しています。また日本の公的研究資金が公的(政府)研究機関に重点配分される傾向が強いこと、そのような研究費の投入を行う国は論文数が少ない傾向にあると指摘しています。「G7主要国に対する論文数の国際競争力低下は、1998年頃から始まった高等教育機関への公的研究資金の相対的減少から約4年のタイムラグを経て、2002年頃から顕現化した。」とまとめ、運営費交付金の削減による基盤的資金の減少が国立大学の論文数の減少の主因であるとしています。

報告書の最後では、日本の研究力の回復に向けた提言を行っています。それは大学の基盤的研究資金、研究者の頭数×研究時間、(科研費に代表される)幅広く配分される研究資金の確保であるとし、「日本のピーク時に回復するためには25%、韓国に追いつくためには50%(1.5倍)、G7諸国や台湾に追いつくためには100%(2倍)増やすことが必要である。」と結論しています。

報告書では、日本の研究力がG7諸国の最下位で、台湾や韓国よりも劣っているとしています。しかし私自身の身の回りにおいては、そこまでの危機感はないようにも思えます。これは人口の差に原因がありそうです。人口は日本が1億2700万人、韓国が5000万人、台湾が2300万人です。たぶん私の研究分野では台湾や韓国の研究者の数が少ない。一方で彼らが注力する分野では、報告書が指摘するような研究水準の拮抗あるいは抜き去りが生じているのでしょう。例えば、半導体産業で韓国・台湾企業の業績が高く、日本企業の業績が低迷しているというニュースを良く目にしますが、その背景には、報告書が指摘するような事情があるのではないでしょうか。

日本・アメリカ・ドイツ・韓国・台湾の一人当たり購買力平価GDPの年次推移を図示します(「世界経済のネタ帳」というwebサイトのツールを利用しました)。これは国民の豊かさを比較的よく表すパラメータだそうです。日本はアメリカ・ドイツのグループに属していましたが成長率が下がり、2007年に台湾に抜かれ、現在は韓国とほぼ同じです。屈曲点は1997-1998年にあります。このころ、橋本龍太郎総理大臣(1996-98年)のもとで消費税が5%に増税されました(1997年4月)。また財政再建の声が高まって政府支出の伸び率が大きく抑えられ、現在まで引き続いています(橋本元首相が晩年にこれらの失政を悔いていた、という報道を目にしたことがあります)。報告書の記述とも符合しています。


日本の研究力に関する報告書をご紹介してきました。国立大学協会は、今年4月19日に安倍晋三総理大臣に向けて「科学技術予算の抜本的拡充に関する要請」を行いました。その公表文書を見ると、報告書の分析結果が反映されているようです。要請が受け入れられ、今後速やかに日本の研究環境が改善していくことを願わずにはおられません。

PEPS宇宙惑星科学セクション編集委員 / 京都大学 生存圏研究所 山本 衛

2016年4月13日水曜日

わかりやすい原稿を書こう

PEPS大気水圏科学セクション編集委員の池原 研です.

日本第四紀学会から編集委員として出ています.日本第四紀学会の学会誌である「第四紀研究」の編集幹事を4期(8年)程務めた経験があります.専門は海域での堆積作用ですが,最近は日本周辺海域で地震や津波,洪水などで形成された堆積物の認定とそれらから過去の地質災害の発生履歴を検討するような仕事を主にしています.このため,年に何回かは調査航海に出るため,PEPSの編集事務局にはいろいろとご迷惑をおかけしています.海洋関係の研究をしているので,大気水圏科学のセクションに属していますが,PEPSでは固体地球科学,横断的分野,地球人間圏科学,地球生命科学のセクションに投稿された原稿を担当しました,あるいはしていますが,自分の所属するセクションの原稿は担当したことがありません.

さて,当たり前のことをタイトルにしました.では「わかりやすい原稿」とはどんなものでしょうか?私は「起承転結」がしっかりしたもので,不足も余分もないものだと思っています.一つは論文の構成です.「Introduction」での問題意識の提示とそれにかかる現状のまとめ,「Materials」や「Study area」での対象地域や試料のしっかりとした記述,「Methods」での研究・分析方法の記述,「Results」での結果の提示,「Discussions」での結果をもとにした論理的な解釈と問題意識を踏まえた議論,「Conclusions」での考察から導き出される結論の明確な記述.これらの要点は多くの論文執筆法の教科書にも書かれていることであり,日本語原稿でも英語原稿でも基本的に同じです.しかし,これをきっちり守っていくことはなかなか難しいことです.私は論文を書く時にシャープさを常に意識します.自分が示した問題意識に対して,過不足ない,どの結果から,どのような議論を経て,どのような結論を示すか,を頭の中にまず作るわけです.さらにPEPSのような国際誌だったら,問題意識はもちろんローカルなものでなく,地域的あるいは全球的なものであるべきでしょう.数多い論文や投稿原稿の中で時折見かけるのが,「Introduction」で提起した問題に対応した結論が載せられていないものや「Results」の章に「解釈」をちりばめているものです.前者はその論文で著者らが主張したいことを不明瞭にします.後者は,どこまでが自分が出した結果で,どこからが解釈なのかが不明瞭になって論文がシャープでなくなります.また,議論はあちこちに飛ばないように順序よくしてほしいです.論文の中に流れがあると読みやすいですね.さらに,やったことを全部書くのでなく,その中から議論に必要なデータを選択することも大事です.特に若い人の原稿では議論に不要な結果など余分な情報が入っている場合が多いです.不要なデータや記述は論文の論点を不明確にします.一方で,もちろん必要なデータはすべて載せられていることは必須です.どうしてそれがそう解釈されるのか,後続の研究者がその結果を使えるようにしっかりとした根拠を示しましょう.もう一つ,思い込みの議論はやめましょう.自分では常識であっても,それが他の人の常識であるとは限りません.図表もわかりやすいものであってほしいですね.不要な空白は削って,数字や文字も大きめにしてほしいです.

以上はまた,私が査読者や編集委員として投稿原稿をみる時の基本でもあります.もっとも,えらそうにこう書いていても,自分の原稿で上記のようなことを査読者から指摘され,修正を求められたこともありました.ここでは,自戒の意味も込めて,そしてこれから論文を書いていってほしい若手研究者に向けて,当たり前のことを書かせてもらいました.常にシャープさを意識して,「わかりやすい原稿」を作っていきたいものです.

以下は,手元にある「日本語の」論文の書き方の本の一例です.
倉茂好匡(2009)環境科学を学ぶ学生のための科学的和文作文法入門.滋賀県立大学環境ブックレット,5,95p.,サンライズ出版.
日本語論文の書き方の入門書で,「日本語の書き方」という最も基礎から入っていますが,英語論文に通ずるところも多数あります.若い人には是非読んでほしい本です.

見延庄士郎(2008)理系のためのレポート・論文完全ナビ.講談社.
実験レポート・卒論の書き方の本ですが,論文の構成や図表の書き方,わかりやすい文章の書き方などは参考になります.

酒井聡樹(2015)これから論文を書く若者のために 究極の大改訂版.共立出版.
私が持っているのはこの前のバージョンである「大改訂増補版」ですが,上記2冊のさらに先,投稿から査読対応まで書かれています.

ピストンコアラの揚収風景.錘の先のパイプが海底に突き刺さって,海底堆積物を抜き取ってきます.

PEPS大気水圏科学セクション編集委員 / 産業技術総合研究所 地質情報研究部門 池原 研



2016年3月29日火曜日

PEPS 3年目への期待

PEPS大気水圏科学セクション編集委員の杉田 文です。

今年も桜の咲く季節となり、2014年4月に創刊されたPEPSはこの春から3年目に入ります。 私は千葉商科大学という社会系の小さな大学に勤めておりますが、専門は地下水学で、2013年に、日本地下水学会と日本水文科学会からの派遣という形で編集委員会に加えさせていただきました。以来、実は今日まで、あまり編集委員らしい仕事をしていないのですが、時間だけは2年も経ちましたので、感想を少し述べさせていただきます。

最初にPEPSのお話を伺った時は、オープンアクセスという出版方式に興味津津、しかも、基礎となる既存雑誌が無いところから学術誌を創刊するとのことで、どうなることかと、楽しみと少し不安が入り混じった気持ちで最初の編集委員会に出かけたことを覚えています。その後、PEPSは、編集委員長の先生方のReviewによると、昨年末までに75編の論文等の掲載、14000件を超すアクセスと7000編を超すダウンロードがあったといいますから、着々と一流の国際誌へと成長、発展をしていると言えます。

一方、私の専門分野では、JpGU大会での発表は数多くありますが、PEPSへの投稿は多くはなく、開店休業のような状態です。原因の一つは周知不足、そのほか、質の高い国際誌ということで、様子を見ている研究者が多いことが挙げられます。前者の周知不足については、関連学会にPEPSが優れた学術誌に成長しつつある現状を広く伝える努力をしようと考えています。

後者についてですが、私どもの分野では、特に日本を研究対象とした論文を欧米の学術誌に投稿すると、ローカルな研究として過小評価される傾向があり、国際誌というと投稿を躊躇することがあるようです。実際に、フィールド研究に基づくプロセス解明といった内容の投稿原稿が、ある国際誌でローカルな研究であると、門前払いにあってしまったという話も聞きました。これは欧米の学術誌に悪意があるわけではなく、単純に聞きなれない地名や現象からそのような判断になるのではないかと思います。アジアの他国の研究者も同様の経験をしているかもしれません。PEPSは日本発、アジア発の国際誌です。今後、日本やアジアの地球惑星科学コミュニティー発展のためにも、PEPSが日本やアジアをフィールドとした質の高い研究成果を報告する場としての役割も担っていくことを期待したいと思います。

JpGU大会でそのような素晴らしい発表をされた研究者、または発表した研究者を御存知の先生方におかれましたては、是非、PEPSへの投稿をご検討いただきますよう、どうぞよろしくお願いいたします。

PEPS大気水圏科学セクション編集委員 / 千葉商科大学 杉田 文




2016年3月3日木曜日

良い雑誌に投稿するということ

PEPS大気水圏科学セクション編集委員の大手 信人です。

僕が初めてちゃんとした雑誌に論文を投稿したのは1994年でした。投稿先はAmerican Geophysical Union のWater Resources Researchで、当時は印刷した原稿を何部かクリップで留めて、郵便でワシントンDCまで送っていました。一部始終をいまでもはっきり覚えています。担当してくれたeditorはUniversity of VirginiaのGeorge Hornbergerさんでした。当時は英文校閲のビジネスもなかったので、アメリカ人の友人に見てもらってはいましたが、つたない英文の原稿を、辛抱強く読んでくれて査読に回してくれました。3ヶ月くらい後だったでしょうか、査読が終わってdecisionが送られてきましたが、結果はreject。ですが、Hornbergerさんのコメントは、査読者のコメントをよく読んで、それに対応して、もう一度投稿しなさいというものでした。それだけではありません。手紙(文字通り、手紙です。紙に印刷されたLetter。)には、どのようにリバイズすればいいのか、どうしたらもっと読者に情報がうまく伝わるのか、それを事細かに指摘し、僕に教えてくれていました。それからまる一年の間に、リバイズ、再投稿、major revisionの指示、リバイズ、再々投稿、minor revisionの指示、再々再投稿を経て、ようやくacceptをもらいました。その間、Hornbergerさんは、僕に何度も的確なリバイズの指示をだしてくれましたが、それよりありがたかったのは、論文を完成させるように、ずっと僕を励まし続けてくれたことでした。いってはなんですが、そのころの自分のボスよりもずっと心強い存在でした。

当時、僕は駆け出しですから、Hornbergerさんがどれほどの人だったかをわからずに、親切なeditorにあたってよかったな、などと思っていましたが、だいぶたってから、彼がHolton Awardをはじめ、数々の賞を受賞している水文学のbig nameだったとわかりました。改めて、ああ、ありがたかった、さすが、Georgeと思いました。

Beginner’s luckだったかもしれません。しかし、定評のある一番良い雑誌のeditorial boardには、ちゃんとした人がいて、その人が回すreviewerもちゃんとした人で、投稿者の気持ちも読者の気持ちもちゃんと考えているのだということを、国際誌への最初の投稿で勉強させてもらいました。良い雑誌に投稿するということは、そのようなことであると、これから論文を書いていこうという若い人達にわかって欲しいし、自分がHornbergerさんのようなeditorでありたいと思います。


PEPS大気水圏科学セクション編集委員 / 京都大学 大学院 情報学研究科 大手 信人